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2.浮きの浮力と感度

第2章は浮きの浮力と感度についてです。

 
 さて浮きの機能のところでも触れましたが、浮きには魚からの魚信を伝えるだけでなく、波に乗る、遠くへ飛ぶ、浮く、沈むなどの機能がありますが、浮きの浮力と感度との関係はどうなっているのでしょう。

 浮きには浮力表示と言う物があります。余浮力とか残浮力とかの言い方もあります。これにはいろいろ厳密な定義はあるものの、実際には各メーカー各作者によってまちまちで、統一された物ではありません。我々がこれからやろうとしている自作浮きでは、それらについての厳密な定義は一切考えず、まあ適当に、いい加減(ちょうど良い加減と言う事です)でいきましょう。

 浮力を考えるとき必要な要素に、排水量と自重の関係があります。排水量とは、浮きが水に浮いている場合、水中の部分と水上の部分ができますが、その水中の部分だけの体積で、それが水何ccになるのかと言う事です。そしてその排水された水の重量(排水量)と、浮き自体の重量の釣り合ったところで、つまり排水量と自重が等しくなったところで、浮きは安定して止まります。これは船の重さを総排水量という単位で表しているのと同じです。

 しかし水の重量は、温度によって変化します。また、真水と海水も比重が異なります。浮力表示の際の厳密な定義とは、これをどう定義するかという事が一つの問題になっています。まあその他に、仕掛けをつけた状態で計るか?その仕掛けはどういう仕掛けか?糸の材質や太さ・長さは?針の材質や大きさ・太さは?より戻しは付けるか?その大きさは?といった複雑な要素があるために、各メーカーがまちまちで統一されていないのでしょう。

 また、余浮力、残浮力と言うのは、水上に出ている部分が水何cc分になるかで決まってきます。たとえば大雑把な計算ですが、浮きの水上に残った部分が、1立方センチだったとすると、それを全て水中に沈めるためには、水1cc分の重さ(排水量)が必要になるという事です。この水上に出ている部分の少ないものほど、沈めるための重量が少なくてすみますから、余浮力が小さいとか、残浮力が少ないといった言い方をします。

 ここまで来ると、浮きの感度を上げるためには残浮力を少なくすればいい事がわかります。確かに残浮力というのは重要な要素の一つではありますが、感度に関する要素はそれだけではありません。
 次に考えることは、ある力が加わったときに排水量がどう変化するかといった点です。たとえば1gの力が加わったときに、1mm沈む浮きと、1cm沈む浮きとでは、どちらが感度かいいと感じるでしょう?答えはもちろん1cm沈むほうですね。ではこの違いはどうして生まれてくるのでしょう。

 排水量のところでも述べましたが、水上に残っている部分の体積が残浮力です。従って同じ体積でも形状を変える事で感度を変える事ができます。たとえば同じ体積で同じ重さのものを、片方はサイコロのように四角く、もう一方をマッチ棒のように細長くしてみます。ただしマッチ棒は水中で垂直に立たせるものとします。さらに後の計算を簡単にするため、自重は0g(ずいぶん都合の良い事を言います)、体積が1立方センチで、平べったい方は1cmX1cmX1cm、マッチ棒は1mmX1mmX100cmとします。(こんな長いマッチ棒は見た事がありませんが・・)
 
 まず両方に、沈める方向に力を加えてみます。だんだん沈んでいきますが、加える力を0.5gにしてみましょう。このとき両方とも排水量は0.5gになっていますが、何処まで沈んでいるでしょう。両者とも全体の半分まで沈んでいるはずです。全体の半分とはつまり、サイコロでは5mm、マッチ棒では50cmになります。ここで明らかな差が出ました。同じ力が加わっても、形状によって沈む量が変わるという事です。これが浮きの感度の2番目の要素です。

 3番目の要素として、浮きの自重の問題があります。物には慣性質量というものがあり、軽いものほどこの力が小さくなります。物を止まっている状態から動かそうとした場合、軽い物の方が小さな力で動きます。(自転車と自動車を比べてみてください)従って浮きの場合にも、軽い物のほうが小さな力で動くわけですから、感度が良くなる事になります。

 私のような素人が考えただけでも、このように3つの要素が出てきますが、この他にも水との摩擦の問題、水中での抵抗の問題、空気中での抵抗の問題、造波抵抗の問題などなどいろいろな要素が関係してきます。まあ先に上げた3つの要素は、我々素人でも充分に応用できる範囲の問題ですが、それ以外は今回は無視する事にしましょう。

 さてそこでまとめとして、感度がいい浮きを作るにはどうすればいいか?です。
先に述べた3つの要素から、

1.残浮力を少なくする。
2.喫水線より上を細長くする
3.軽くする
これで決まりです。

 まあ感度最優先なら、これでいいんですけど、釣りは実験室の中でやるものではなく、自然界の中でやる物です。風あり、波あり、水流もありです。この様な多用な条件の中で、感度最優先の浮きははっきり言って使い物になりません。あまりに軽量なものは、風が吹いてきたときに対応できなくなります。風がなくても、振り込みができなくなり苦労しそうです。また波が激しくなって、仕掛けが落ち着かなくなった場合など、ハリスにガンダマを打ったりしますが、残浮力の小さい浮きではそれが出来ません。そこで、それらの要素のうち、どの要素を際立たせて、どの要素を抑えるか、といった工夫が必要になります。

 釣り場の状況は一様ではありませんから、こんな状況ならこの浮き、別の状況ではこっちの浮きといった使い分けが必要になってきます。浮き作りを始めると、その時々の状況にマッチしたいろいろな浮きを作りたくなり、どんどん深みにはまります。そして決して満足のいくものが出来ることはありません。市販品を買ったほうがよほど安上がりだし、使い勝手もいいです。

 あなたはここまでの考察を読んで、自分で浮きを作ってみようと思いますか?止めた方がいいと思いますよ。市販品の方がよっぽど高性能です。でも私は作りつづけます。まあ他に趣味があるわけでもないし、暇つぶしにはもってこいですし。
 いやいや、これだ!!という作品にいつか出会えるかもしれないからです。(あーあ、遠矢浮き買ってこようかな・・・)

このページの写真はJ−PHONE J−SH04で撮影しました。

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